アーユルヴェーダが考える病気の進行6ステップ&自分でできる予防法
健康で幸せに長生きするための方法を示しているアーユルヴェーダでは、病気に対する捉え方も少し違います。
アーユルヴェーダでは、病気には6つのステップがあり、例え自覚症状がなくても最初のステップの時点で健康ではないと考えます。
しかし、初期の段階(第3段階まで)であれば、セルフケアによって健康な状態を取り戻すことができ、慢性的な病気になるのを防ぐことができます。
今回は、アーユルヴェーダが考える病気の原因を解説し、1~6の段階ごとに身体や心に起こっている変化を解説しました。
さらに、病気を防ぐまたは悪化させない方法もまとめました。
ドーシャが分かれば予防できる アーユルヴェーダが考える病気とは?
アーユルヴェーダが考える病気とは、下記の状態のことを意味します。
・ドーシャバランスから乱れている状態
・ダートゥ(身体組織)の生成と機能が低下している状態
・ラマ(老廃物)が正しく生成されていなかったり、排出されていなかったりする状態
・アグニ(消化の火)が低下していたり正しく働いていなかったりする状態
上記の状態に一つでも当てはまると、例え具体的な病名がつかなくてもアーユルヴェーダでは病気と捉えます。
●すべての病気の原因はドーシャのアンバランスにある
アーユルヴェーダでは、病気の根本原因は、ヴァータ・ピッタ・カパいずれかのドーシャの過剰にあると考えます。
ドーシャは、体質、年齢、気候、場所などによって常にそのバランスが揺らいでいるもので、通常は、それらを自然に調整することができます。
しかし、不規則な生活習慣や不適切な運動、悪い食生活、また突然の訃報や悲しみ・怒りの感情などによって、通常よりドーシャバランスを大きく崩すことがあります。
それらが調整されず放置されると、身体の中で増幅して病気へと繋がってしまいます。
※ドーシャについては、こちらで詳しく解説しています。
「アーユルヴェーダに登場するドーシャとは?意味や活用法を徹底解説!」
●西洋医学が考える病気との違い
西洋医学では、検査で明らかになっていないものや目で見えない・説明できない症状は病気とみなされないことが多いです。
また、病名が明らかになった後は、局所的に症状を抑えたり病素を取り除く治療が施されます。
一方、アーユルヴェーダをはじめ多くの伝統医学では、不定愁訴やちょっとした違和感なども病気の初期段階と捉えます。
また部分ではなく体全体を包括的にケアし、根本的な原因を取り除いていく療法が基本となります。
アーユルヴェーダで解説 病気進行の6ステップとは?
アーユルヴェーダではドーシャの増幅が病気の根本原因と考えており、それらが変化していくことで、病気も進行していくと考えます。
具体的には6つの段階に分かれており、①蓄積→②憎悪→③播種→④局在化→⑤発症→⑥慢性化です。
アーユルヴェーダでは、①の段階でも一種の病気と捉えます。
中医学においては、①~④が未病、⑤・⑥が病気と捉えます。
さらに西洋医学においては、⑥だけを病気と捉えます。
ここからは各段階ごとに起きるドーシャの動きや変化、実際に起こる可能性のある症状などを解説していきます。
アーユルヴェーダ病気進行ステップ①:蓄積
第1段階は、ドーシャの蓄積です。
ドーシャは日々ちょっとした変化で蓄積したり悪化したりしますが、健康であれば自然に鎮静されていくものです。
しかし、不規則な生活習慣や良くない食生活、不適切な運動、またストレスなどによって過剰分が排出できなくなると、首座に蓄積されるようになります。
首座とは、各ドーシャのハブスポットのようなところで、ヴァータは大腸・結腸、ピッタは小腸・胃、カパは胃・肺です。
この段階では、大きな症状がないものの、場合によっては下記のような不調を感じることもあります。
・ヴァータの異常:便秘、腸内ガス、口内の渇き、身体の冷え、不安・恐れ、不眠
・ピッタの異常:口内の苦味、皮膚の黄色化、胃酸過多、焼けるような感覚、怒り・批判
・カパの異常:食欲低下、だるさ、無気、脚の重さ、顔の青白さ、食欲減退、消化不全
この段階では、簡単にバランスを回復することが可能で、自然治癒力で蓄積したドーシャが取り除かれることもあります。
アーユルヴェーダ病気進行ステップ②:憎悪
第2段階は、ドーシャの憎悪です。
首座に蓄積したドーシャが取り除れなかった場合、ヴァータ・ピッタ・カパは首座を離れて動き出します。
この段階でも大きな症状がなく、特に問題ないと感じる人の方が多いと思いますが、場合によっては、下記のようなちょっとした違和感を感じるかもしれません。
・ヴァータの症状:便秘の悪化、腸内ガスの増加、冷たい手足、からだの乾燥
・ピッタの症状:胸焼け、胃酸過多・消化不良、臍付近のヒリヒリした痛み
・カパの症状:腸内にガスが溜まる、眠気、唾液の増加、身体の不快感
中国医学では、この段階から未病とみなします。
この段階でもドーシャに応じたセルフケアを行うことで、バランスを取り戻すことができます。
※各ドーシャの特徴やケア方法などはこちらで詳しく解説しています。
「アーユルヴェーダにおけるドーシャの一つ“ヴァータ”について徹底解説!」
「アーユルヴェーダにおけるドーシャの一つ“ピッタ”について徹底解説!」
「アーユルヴェーダにおけるドーシャの一つ“カパ”について徹底解説!」
アーユルヴェーダ病気進行ステップ③:播種
第3段階は、ドーシャの播種です。
播種とは植物の種を播くこと、つまり病気の種となる過剰ドーシャが身体中に播かれていくことを意味します。
身体中播かれたドーシャは、特にその人の弱い組織に蓄積されていきます。
この段階で感じるのは、なんとなく不調、不定愁訴のような症状です。
ただ具体的にどこかが不調なのか自分でもはっきりしないため、疲れや歳のせいといったことで片付ける人も多いです。
場合によっては、下記のような症状を感じる方もいます。
・ヴァータの症状:関節の硬化、疲労、落ち着かない心、心配事・恐れ・不安
・ピッタの症状:排尿、排便時の焼けるような感覚、黄色っぽい便、消化の時の痛み
・カパの症状:腫れ・むくみ、粘液の増加、嘔吐、だるさ
中国医学では、この段階で未病とみなしますが西洋医学では健康とみなされることが多いです。
この段階でもまだ、セラピストやセルフでのオイルマッサージ、ヨガ、食事療法などによってある程度ケアすることができます。
アーユルヴェーダ病気進行ステップ④:局在化
第4段階は、ドーシャの局在化です。
増幅したドーシャは、弱点のある組織に居座り、組織を衰えさせて、アーマ(毒素)を発生させます。
この段階では、関節の痛みなど、はっきりとした自覚症状があります。
中国医学ではこの段階で未病とみなしますが、西洋医学ではまだ病気とみなされないことが多いです。
アーユルヴェーダでは、オイル、発汗、解毒療法などによって身体中に播種したドーシャを首座に戻し、パンチャカルマによって排除するという処置が施されます。
アーユルヴェーダ病気進行ステップ⑤:発症
第5段階は発症です。
弱点のある組織で増幅したドーシャは、脂肪、筋肉、骨、骨髄などのダートゥや、脳や心臓といった最重要部位へと入り込みます。
増幅したヴァータ・ピッタ・カパがどのように身体に影響を与えているのかといったことが複雑になり、ドーシャバランスを戻す難易度が上がります。
この段階では、中国医学では病気、西洋医学ではまだ病気とみなされないことが多いです。
この段階でのケアには、アーユルヴェーダ医師の力を必要とします。
ドーシャのバランス状態やケアすべき組織などを診断してもらうと共に、パンチャカルマや薬草などによる専門治療が進められます。
またセルフケアにおいても、食生活をはじめ、生活習慣を根本から見直すことが求められ、ドーシャバランスを取り戻すには、時間がかかります。
アーユルヴェーダ病気進行ステップ⑥:慢性化
第6段階は慢性化です。
弱い組織で増幅したドーシャが身体を崩壊させており、具体的な病名とその合併症が明確になります。
病気は、その種を体中に撒き散らしており、薬などで一度治まったように思えても弱さが残り、条件が許せば再び成長を始めます。
ドーシャが静められずに症状だけ改善された場合には、過剰ドーシャは移動して他の組織に居座り、また別の不調を起こします。
この段階でやっと、中国医学においても西洋医学においても病気とみなされます。
アーユルヴェーダが教えてくれる、病気を予防する方法
現代において、アーユルヴェーダが考える“健康”を実現できている人はいないと言われており、多くの人が3段階~4段階にいます。
ただ、1~3段階においては自身でケアする事が可能です。
ここからは、ケアが難しくなる4段階以上に進まないようにするための予防方法をご紹介します。
●自分の身体と心の声に敏感になる
病気を予防する上で最も大事なことは、自分の身体・心の声に耳を傾けることだとアーユルヴェーダでは考えます。
何か不調がある時に、身体は必ずサインを出します。
それを聞き逃さないように、普段から五感を研ぎ澄ませること、そして自分の身体や心に必要なもの(食事や運動、休息、瞑想、呼吸など)に素直に従うことが大切です。
●アグニを強化する
アグニとは消化の火のことです。
消化力を強くすることで、食べ物の分解・代謝力はもちろんのこと、マインドにおいてもストレスを貯めず健康を保つことができます。
反対に、アグニが弱っていると未消化物が残りそれがアーマ(毒素)となって身や心を蝕んでいきます。
※アグニについては、こちらで詳しくご紹介しています。
「美容食材の吸収もUP!アーユルヴェーダアグニ(消化力)を調整する方法」
●自分の元々のドーシャバランスを知る
病気を予防するためには、自分の生まれつきのドーシャや今のドーシャバランスを知ることが大切です。
例えばあなたがヴァータ体質だった場合、あなたはヴァータを増やす経験ばかりを求める傾向があり、よりヴァータが増えてバランスを崩すことになります。
自分の生まれつきのドーシャが過剰になって病気になった場合は、その他のドーシャの過剰による病気よりも治療が難しくなります。
※自身のドーシャバランスを知りたい方は、こちらのドーシャ診断をご活用ください。
⑤まとめ
今回は、アーユルヴェーダが考える病気の定義や原因そして6の進行ステップと予防法についてまとめました。
●アーユルヴェーダでは、ヴァータ・ピッタ・カパのアンバランスが病気の根本原因であると考えます。
●アーユルヴェーダでは、病気は①蓄積→②憎悪→③播種→④局在化→⑤発症→⑥慢性化の6つのステップによって進行すると考えます。
●第1段階は、ドーシャが首座に蓄積されている状態です。
●第2段階は、ドーシャが首座を離れて増えている状態です。
●第3段階は、過剰になったドーシャが身体の中に散らばっている状態です。
●第4段階は、過剰になってドーシャが弱い組織に定着し、アーマ(毒素)を生成している状態です。
●第5段階は、過剰になったドーシャが、脂肪・筋肉、骨といった組織や、脳・心臓と言った最深部まで広がった状態です。
●第6段階は、過剰になって散らばったドーシャが身体を崩壊させている状態です。
●病気を第1、第2段階までで抑えセルフケアで健康な状態に戻すためには、
心身の声に耳を傾けること、アグニを強化すること、自分の本来のドーシャバランスを知っておくことが大切です。