アーユルヴェーダにおいて、心のドーシャと言われているトリグナとは?
日々の生活の中で、すぐにイライラしてしまったり、起こってしまったことをクヨクヨと悩んでしまったり
することありますよね。
アーユルヴェーダでは、それらの心の乱れはトリグナというエネルギーのバランスが崩れていることによるものだと考えます。
今回は、このトリグナについて詳しく解説したいと思います。
トリグナはアーユルヴェーダやインド哲学独自の概念なので少し分かりづらいのですが、できる限り分かりやすくまとめました。
マインドをトリグナの視点で考えることで、自分を客観視できるようになるかもしれません。
【アーユルヴェーダ概念】心のエネルギーとされるトリグナとは?
トリグナとは、身体のエネルギーであるドーシャに対して、心のエネルギーとしてアーユルヴェーダでは考えられています。
●トリグナと言う概念について
トリグナにはサットヴァ・ラジャス・タマスがあり、総称してトリグナといいます。
トリグナは様々な視点で捉えられているのですが、サーンキャ哲学では、生物、無生物、生命、宇宙のすべての物質創出にかかわる3つの始原的な力、またはエネルギーだとされています。
この世は、トリグナのバランス崩れたことによって誕生したと考えられているほど重要なものです。
●サットヴァ・ラジャス・タマスの役割
トリグナは人のマインドに影響を与えるエネルギーです。
サットヴァ・ラジャス・タマスにはそれぞれ役割があります。
サットヴァは、人のマインドにおける純粋性や知性や理解力を司り、ラジャスは意欲や情熱を司り、タマスは安定や持続を司ります。
●トリグナはすべての人の中にある
サットヴァ・ラジャス・タマスはすべての人の中にあります。
ただ、人によって優勢になりやすいトリグナが違います。
例えば、すぐに怒ってしまう人や情緒不安定になりやすい人は、ラジャスが優勢になりやすく、いつまでも根に持つ人や自虐的になりやすい人は、タマスが優勢になりやすいといえます。
しかし、ラジャスが優勢になりやすい人にもタマスはあり、タマスが優勢になりやすい人にもラジャスはあります。そしてどちらもサットヴァも携えているのです。
トリグナを調整することできれば、心の平穏を保つことができます。
トリグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)のそれぞれの役割や特徴を解説
ここからは、サットヴァ・ラジャス・タマスの特性をもう少し分かりやすく解説します。
●サットヴァの役割や特徴
・サットヴァの性質は、純粋・明晰・本質といった言葉で表現されます。
・サットヴァは、身体や細胞の中に浸透し、人の知性や記憶を維持する役割を果たします。
・日本語では「善」と訳されます。
・愛情や知性や優しさを表します。
・サットヴァは、多ければ多いほどよいエネルギーであり、心身が清らかで善行に励むことをサットヴァ的生き方と言います。
●ラジャスの役割や特徴
・ラジャスの性質は、運動・変換・結合といった言葉で表現されます。
・外から得た刺激を、感情や価値観、見え方や夢といったことに変換し、人の性格や行動に影響を与えます。
・ラジャスによって、感情が生まれたり気持ちに変化が起きたりします。
・増え過ぎると、活動的になりすぎたり、不安や怒りの感情が過剰になったりします。
●タマスの役割や特徴
・タマスの性質は、惰性・安定・停滞・構築といった言葉で表現されます。
・安定を表すと言われています。
・また、心の基盤を作ります。
・体液や老廃物といった身体そのものにも関わっており、ストレスへの対応力や丈夫な身体作りにも良い影響を与えます。
・増え過ぎると、怠惰になったり先入観や固定概念に縛られるようになります。
サットヴァ・ラジャス・タマスは単体で存在するのではなく、それぞれ繋がり合い影響しあっています。
心の健康診断法 グナのバランスが崩れた時のサインとは?
トリグナはどれも大事なエネルギーであり、ラジャス・タマス・サットヴァのどれも欠かすことができないのですが、ラジャスとタマスについては増えすぎることでマインドが不安定になってしまします。
うつ病を始めとする現代の様々な心の病も、トリグナのアンバランスによって起こっていると考えることができます。
ここからは、ラジャス・タマスが優勢になっている時に見られる心の兆候をご紹介します。
●ラジャスが優勢になっている時のサイン
動性の性質を持つラジャスが優勢になっている時には、下記の様な兆候が見られます。
・優柔不断
・過度な行動
・喋りすぎ
・神経質
・不安感
・分裂的
・過度な野心
・攻撃的
・批判的
・権威主義
・怒りっぽい
・自尊心が強すぎる
・見栄っ張り
・排他的
・こだわりが強過ぎる
・感傷的
・贅沢
身体的な面では、ヴァータ・ピッタドーシャに影響を与えます。
●タマスが優勢になっている時のサイン
静性の性質を持つタマスが優勢になっている時には、下記のような兆候が見られます。
・恐怖心
・うそをつく
・秘密が多くなる
・抑鬱状態
・自滅的
・自虐的
・憎しみ
・執念深い
・人が見ていないところで不正を働く
・大雑把
・鈍感
・無感情
・人のものを盗む
身体的な面では、カパドーシャに影響を与えます。
●サットヴァが増えている時
純粋性を持つサットヴァに満ち足りている時は、愛情・優しさ・正しい知性に溢れています。
ヴァータ・ピッタ・カパのドーシャバランスも整っており、身体の調子も良い状態です。
心の健康を保つために知っておきたい!トリグナの調整方法
過剰になったラジャスやタマスを調整するためには、関連するヴァータ・ピッタ・カパのボディリティドーシャを調整したり、できる限りサットヴァを増やすような生活を送ることが大切です。
●まずは、自分の心の傾向を知る
まずは、自分の心のクセを知ることから始めます。
ラジャスが優勢になった時、またはタマスが優勢になった時、自分自身でそれに気づくということが大切です。
多くの人は、ラジャスまたはタマスのうち優勢になりやすい方が決まっていますので、自分を客観視して心のクセを見つけましょう。
その感度を高める上でオススメなのは、瞑想です。
毎日10分でも5分でもよいので、瞑想をしてみましょう。
過去でも未来でもない、今この瞬間だけに目を向けて、自分が感じていることを俯瞰することで、自分がよく考えていることや感情の対象・傾向などが自然と分かるようになります。
その際に大切なのは、自分をジャッジしないということです。
あるがままの自分を受け入れることを意識してみてください。
●ラジャスの調整法
ラジャスによる過剰な動きや熱を調整するためには、“冷ます”“リラックスする”“癒やす”ということを意識することが大切となります。
暑い場所を避けて、風を感じられる快適な環境を整えたり、ラベンダー・ローズ・ゼラニウムといったような、リラックス効果のあるアロマオイルを取り入れてたりしてみるのもオススメです。
優しいタッチのマッサージを受けたり、動物と触れ合ったり森林浴を行ったりするなど、第三者に癒やしを求めるというのもラジャスの調整に役立ちます
●タマスの調整法
タマスの惰性や停滞を調整するためには、“動く”“流す”“研ぎ澄ます”ということを意識することが大切となります。
ちょっとしたこともでも良いので、今の生活に変化を加えるのがオススメです。
新しい場所・お店などに出向いて、外に目を向けてみましょう。
また、その日の出来事や感じたことなどを言葉や文章にするのもオススメ、頭をクリアにして感覚を研ぎ澄ますことに役立ちます。
●サットヴァを増やす方法
食生活がサットヴァに与える影響は大きいと言われています。
サットヴァを増やす食材は、牛乳・ギー・デーツ・米・はちみつなど、甘味のあるものが中心となります。
特に牛乳は心を穏やかにするとアーユルヴェーダでは考えられていますので、心は落ち着かない時には、温めて飲んでみてください。そこに少量のハチミツを加えるのもオススメです。
また食事の摂り方も重要で
・静かな環境で落ち着いていただくこと
・消化によいものを適量いただくこと
・なるべく出来立てのものをいただくこと
・6味を取り入れること
を意識するとよいです。
まとめ
今回は、アーユルヴェーダにおいて心のドーシャと言われているトリグナについて解説しました。
●トリグナには、サットヴァ・ラジャス・タマスがあり、それぞれ純粋性・動性・静性の特性を持つマインドに影響を与えます。
●すべての人にサットヴァ・ラジャス・タマスがありますが、ラジャスが優勢になりやすいかタマスが優勢になりやすいかは人によって違います。
●攻撃的になったり、情緒不安定になったりするのはラジャスが優勢になっている時であり、怠惰になったり自虐的になったりするのはタマスが優勢になっている時です。
●心が愛情・優しさで満たされている時というのは、サットヴァが増えている時です。
●ラジャスを調整するには、“冷ます”“リラックスする”“癒やす”を意識したライフスタイルを送る必要があります。
●タマスを調整するには、“動く”“流す”“研ぎ澄ます”を意識したライフスタイルを送る必要があります。
●甘味を取り入れた食材を取ったり、味のバランスを意識したり、消化に良い落ち着いた環境で食事を摂ったりすることは、サットヴァを増やすことに繋がります。