ヨガを楽しく安全に続けるために知っておきたい【ジョイント バイ ジョイント セオリー】
ヨガのポーズを行っていて、よく言われる言葉があります。
“無理をしないでくださいね”
“痛みを感じるほど深めないようにしましょう”
でも、無理ってどういう状態のこと?
痛みは感じていないけど、どの程度まで深めちゃっていいの?
そう疑問に思うことありませんか?
「ジョイントバイジョイントセオリー」は、上記のような疑問に一つの基準を示してくれる理論です。
ジョイント バイ ジョイント セオリーとは?
ジョイントバイジョイントセオリーとは、一言でいうと、各関節の主要な機能と安全な動かし方をまとめたもの。
米国でコンディショニングコーチをしている Michael Boyle と理学療法士の Grey Cockが考案した運動理論なのだそうです。
●柔軟性か、安定性か、その両方か?
ジョイントバイジョインセオリーによると、関節の重要な機能は、 movility(柔軟性)、stability(安定性)、Mo-stability(柔軟性と安定性)の3つに分かれていて、どれに当てはまるかは関節の場所や作りによって異なるといいます。
例えば、距骨下関節(かかと部分)はstability、距腿関節(足首)はmobility、膝関節はstability、股関節はmovilityとなっていて、基本的にはmovilityとstabilityが交互になっています。
そして、球関節である股関節と肩関節は、Mo-stabilityとなります。
これらを理解しないままに、本当は安定性が重要な関節で柔軟性を必要以上に高めてしまったり、実際には柔軟性が重要な関節で安定性を必要以上に高めてしまったりすると、ケガや炎症などの原因になってしまうというわけです。
●ヨガは関節の機能を高める素晴らしい運動療法
関節のmovility(柔軟性)、stability(安定性)、Mo-stability(柔軟性と安定性)を正しく高めることは、健康な身体を維持する上でとても重要です。
ヨガのアーサナは、この3つを同時にバランスよくトレーニングすることができる優れた運動療法だと言われています。
ただ、ヨガが生まれた5,000年前は、もちろんジョイントバイジョインセオリーなどという言葉は無かったわけですから、ヨガを生み出した修行僧はこれらを身体で自然と感じていたのかもしれないですね。
ヨガで陥りがち、気をつけたい身体の使い方
しかし、ストイックなヨギーの中には、このジョイントバイジョイントセオリーで黄色信号に当てはまってしまうことがあるそうです。
これまでヨガを行っていて、痛みを感じたことはありませんか?それも、アーサナを取っている途中ではなく、ヨガをした次の日に感じたり、慢性的になんとなく痛みが続いていたり・・・それはもしかしたら関節に負担がかかっていたり、可動域以上に動かしてしまっていたりするからかもしれません。
●きれいなポーズをとるための代償
例えば、インドの修行僧が取っているような、足を頭の上まで上げたり、腕一本で身体を支えるような難易度の高いポーズ、私も憧れてしまうのですが、いきなり実践するのは危険です。
あの方たちは、限界を超えるための、長期間に及ぶ特殊な修行を行っているので、一般的なヨガと同じではないのです。
また、雑誌などでモデルさんが腰を大きく反らせり、足を180°に近い幅に広げたりしている写真、キレイで憧れる方も少なくないと思いますが、こちらも簡単に真似するのは危険です。
やはり、元々バレリーナであったり特殊なトレーニングをされていたり、あるいは、写真を撮るために一瞬だけそのような動きを行っているのかもしれません。
いずれにしても、ジョイントバイジョイントセオリーの視点で見ると、長く続けても良いポーズとは
言えないそうです。
●痛みを感じない・気づかない
また、ヨガを行っていてちょっと注意が必要だなと思うのは、無理をしていても痛みを感じないことがあるという点です。
関節や筋肉の機能が悪いのに、痛みがないためどんどんアーサナを深めていくと、気づかない間に隣接する部位が代償動作を起こし、ヘルニアなどの問題を引き起こす可能性があります。
それらを防ぐためにも、ジョイントバイジョイントセオリーなどの解剖学を理解したヨガを行うことが重要であり、また安全にヨガを楽しむためには、柔軟性を高める→安定性を高めるという順番で
プラクティスしていくことが大切なのだそうです。
最低限押さえておきたい腰椎・胸椎・股関節の最大角度
ここからは、特に注意したい3つの関節の最大角度をご紹介します。
●腰椎
腰椎においてもっとも注意したいのは、伸展、つまり身体を反らせる動きです。
まず腰椎というのは、左右の腸骨の中心からおヘソの上ぐらいまでつながっている椎骨5つ分のことを指します。
腰椎の伸展は、床にうつ伏せで寝ている状態を0°と考えて15°が可動域となります。
例えば、アップドッグや、三日月のポーズなどのとき、腰椎を伸展させる動きをすると思いますが、ジョイントバイジョインセオリーでは、15°が目安となります。
●胸椎
胸椎において最も注意したいのは、屈曲、つまり身体を前に折りたたむ動きです。
まず胸椎というのは、肋骨の中心あたりから首の下までつながっている椎骨12個分のことを指します。
胸椎の屈曲は、まっすぐ立った状態を0°と考えて30~40°が可動域となります。
例えば、パスチモッターナーサナなどのとき、胸椎を前屈させる動きをすると思いますが、ジョイントバイジョイントセオリーでは、30~40°が目安となります。
●頚椎
頚椎において最も注意したいのは、回旋、つまり捻じる動きです。
まず頚椎というのは、首にある椎骨7個分のことを指します。
頚椎の回旋は、正面を向いた状態を0°と考えて、90°が可動域となります。
例えば、アルダマッチェンドラや、ねじった体側のポーズのとき、また三角のポーズなどでも首を回旋させる動きをすると思いますが、ジョイントバイジョイントセオリーでは、90°が目安となります。