ヨガで呼吸が大事にされているのはなぜ?呼吸の役割や身体・心への作用を解説!
ヨガを行っているときに、“呼吸を大事にしましょう”と言われることがよくありますよね。
しかし、なぜそんなに呼吸が大事なのでしょうか。
今回は、伝統的なヨガの教えと生物学的な呼吸の役割の両方から、呼吸が大事な理由を紐解いてみたいと思います。
後半では、ヨガのベーシックな呼吸法と日常におけるきほんの呼吸もご紹介しています。
ヨガの効果を高めたい方や、自然な方法で健幸長寿を目指したいとお考えの方は、ぜひご参考にご覧ください!
ヨガで呼吸が大切にされている理由 心身への影響を解説
ヨガを生み出したインドの聖者は修行の中で、呼吸が心と身体に大きな影響を与えていることを悟ったと言われています。
また自然を観察している中で、比較的呼吸が早い生き物(例えば鳥やうさぎ)は寿命が短く、呼吸がゆっくりな生き物(例えば亀や象)は寿命が長い、つまり健康長寿を実現するにはゆっくり深く呼吸することが大切であることに気づいたのです。
●自律神経の調整
吸う・吐くという行為は、自分でできる唯一の自律神経調整方法です。
例えば、呼吸を意識的に早く浅く行うと、自然と頭が冴えたり活動的になったりと交感神経が高まります。
反対に、呼吸を意識的にゆっくり深く行うと、自然と頭がリラックスしたり落ち着いたりと副交感神経が高まります。
ヨガでは、意識的にゆっくり深く呼吸することが多いのですが、それは日常生活で多くの人が高まりやすい交感神経を沈め、副交感神経を高める訓練をしているといえます。
特に、ハードなポーズのときやポーズを深めようとしているときには、交感神経が優位になりがちですが、呼吸をゆっくり深く行う訓練を続けることで、暴走しようとする自律神経を自分の意識でコントロールできるようになります。
●プラーナを流す
ヨガの目的の一つに、プラーナの流すということがあります。
プラーナとは、生物に命をもたらしている大切なエネルギーのこと、“気”とも言い換えられます。
プラーナそのものは、体中に張り巡らされたスロータスという管を通って流れているのですが、目に見えないものであり、普段感じることが難しいものです。
しかし、呼吸はプラーナを運ぶ乗り物のようなものなので、呼吸を行うことでプラーナの流れを分かりやすく感じることができるのです。
生物学的な呼吸の役割・身体への働きを分かりやすく解説
ここからは、生物的な呼吸の役割や身体の中での働きを見ていきましょう。
少し複雑ですが、これを理解しておくと健康長寿を目指す上で呼吸がいかに大切かがよく分かります。
●呼吸とは?
呼吸とは、簡単にいうと、酸素を身体に取り入れ二酸化炭素を身体から出す行為です。
ガス交換とも表現されるこの働きは、外呼吸と内呼吸の2つの段階に分けることができます。
●外呼吸
外呼吸とは、肺で行われるガス交換のこと、多くの人が呼吸と聞いてイメージする働きです。
口や鼻から息を吸い込むと、横隔膜が下がったり、肋間筋が広がったりして肺が膨らみ空気が入ってきます。
その空気(酸素)は、肺の中にある無数の肺胞から血液に取り込まれ、動脈を通って心臓へ送られていきます。
一方、身体の中で不要になった二酸化炭素は、血液に乗って心臓に集められ、静脈を通して肺胞に戻り、息を吐いて横隔膜が上がったり肋間筋が縮んだりして肺が縮んだりするのと同時に、身体の外に出ていきます。
●内呼吸
内呼吸とは、細胞の中で行われるガス交換のことです。
息を吸ったときに取り込まれた酸素は、血液とともに、心臓を通って全身の細胞に送られていきます。
細胞内では、ミトコンドリアが、送られてきた酸素を使って、身体の中に取り込まれた有機物(炭水化物・脂質・蛋白質など)を水と二酸化炭素に分解し、生きるために必要なエネルギー(ATPエネルギー)を発生させます。
この代謝活動によって発生した二酸化炭素が、血液中に戻されて静脈を通って心臓に送られ、吐く息とともに肺から身体の外に出されていきます。
●皮膚呼吸
皮膚も外呼吸をしています。
人は皮膚の表面から0.25-0.4mm(表皮と真皮の一部)の深さまでだけがほぼ空気中から皮膚を通しての酸素供給が行われていると言われています。
つまり、お肌特に最も目立つお肌の表面を美しく保つためには、皮膚が深呼吸できるようにお肌を清潔に潤いある状態に保っておくことが大事といえますね。
ヨガのベーシックな呼吸法
ヨガには、調気法と呼ばれる呼吸の方法が色々あります。
目的によってその方法も異なるのですが、今回はベースとなる呼吸法をご紹介します。
●ヨガの呼吸法を行うタイミング
伝統的には、アーサナを行ったあと調気法を行うのがよいとされていますが、アーサナの前でも、朝や夜、寝る前でも、自分が心を整えたいと思うときであればいつでも実践して問題ありません。
ただし、この呼吸法は身体を内側から動かしていくので、食事の直後はおすすめできません。
少なくとも食後1時間以上経ってから行うようにしましょう。
●ヨガのベーシックな呼吸方法
・シャバーサナの姿勢、またはスカーサナやあぐらで座ります。
・手は楽な位置につきます。迷う場合は、膝の上に置いておきましょう。
・軽く目を閉じるか、遠く1点を見つめ続けます。
<吸う方法>
・鼻から大きく息を吸い込んで、ゆっくりと空気をお腹を膨らませていきます。
・肺胞一つ一つに空気が送り込まれ、肺いっぱいに空気がたまっていくのを感じましょう。
・横隔膜が下がって、肋骨が左右に広がっていきます。
・さらに息を吸い続けると胸、鎖骨が広がり、首の周辺に少し圧迫感を感じるようになります。
<吐く方法>
・息を吐きながら首の周辺を緩ませて、鎖骨・胸の順番でリラックスさせ下げていきましょう。
・肺から空気が抜けていき、肋骨が収縮していきます。
・お腹が凹んでおヘソが背中の方へ近づいていくのを感じます。
・空気がすべて身体から出ていくまで細く長く吐き続け、吐ききった後もそのまましばらく見守ります。(息が止まっている状態)
・体が空気を欲したらと、鼻から吸気を始めましょう。
●ポイント
・身体に余計な力を入れたり、緊張させたりしないように注意しましょう。
・海の波が引いたり満ちたりする動きをイメージしながら行うと分かりやすいです。
・まずは、1回あたり5~10回の呼吸からはじめ、慣れてきたら回数を増やしていきましょう。(基準は1回で10分ほど)
基本の呼吸を身につけるために“呼吸レッスン”を受けてみよう
最近は、ヨガだけでなく普段の生活でも呼吸を大切にしようという動きが高まっています。
人は4秒に1回ほどのタイミングで、約500mlの空気を吸ったり吐いたりしており、それは1日あたりで計算すると21,600回、1080Lの空気を吸ったり吐いたりしていることになります。
●実は正しい呼吸ができていない人が多い
すべての人が寝てるときに起きているときも絶えず呼吸を続けているわけですが、それを正しくできている人が実は少ないと言われています。
生まれてすぐ赤ちゃんの状態のときは正しい呼吸を行っているものの、年を重ねるにつれて、様々な身体のクセがつき、呼吸の度に肩を上下させたり、背中の筋肉を動かしたりしながら呼吸を行うようになってしまうのだそうです。
そしてそれが、慢性的な身体に不調をもたらしているということもあるのだとか。。。
●きほんの呼吸ができたらいいことたくさん
自身のクセを知ってそれらを改善し、きほんの呼吸ができるようになったら、慢性的な腰痛や肩こりといった身体の不調を改善できるだけでなく、仕事や生活のパフォーマンスもあげられるようになると言われています。
すでに様々なプロスポーツ選手が呼吸法を普段から取り入れており、怪我を早く治癒させたり、そもそも怪我しにくい身体を作ったり、動きのパフォーマンスを高めることにつなげているのだそうです。
●“きほんの呼吸レッスン”を受けてみよう
きほんの呼吸は、自己流で行うより、一度プロの方に自身の呼吸を診てもらった上で、しっかりレッスンしてもらうのがおすすめです。
私も、きほんの呼吸® 呼吸トレーナーL認定の講師、原ひとみさんに教えてもらいました!
ひとみさんは、呼吸トレーナーであると同時にベテランのヨガ・ピラティスインストラクターでもあるので、ヨガの呼吸法を理解した上で、日常における正しい呼吸方法を丁寧に教えてくれます。
詳しくは、ひとみさんのHPをご覧ください!
まとめ
今回は、ヨガで呼吸が大切にされている理由について、ヨガの教えと生物学的観点から解説しました。
●ヨガでは心のトレーニングとして呼吸が大事にされています。
●ヨガで呼吸を整えることで、自律神経がコントロールできると同時にプラーナの流れを感じることができます。
●生物学的に考える呼吸には、酸素を取り入れ二酸化炭素を出すという外呼吸と、細胞に取り込まれた酸素を使って、生命活動に必要なエネルギーを作る内呼吸があります。
●ヨガのベーシックな呼吸は、お腹・胸・鎖骨にゆっくり空気を送り込み、それらを鎖骨・胸・お腹の順番に吐ききっていくという方法で行われます。
●最近、日常生活における呼吸の大切さが注目されており、正しい方法を身につけることで身体によい効果が期待できたり、生活のパフォーマンスが上がったりすると言われています。
日常生活におけるただしい呼吸「きほんの呼吸」は、呼吸トレーナーに教えてもらうのがおすすめです。