アロマは脳にどのように作用する?感情・記憶・ホルモンへの影響を解説!
アロマは、補完・代替療法の一つであり西洋医学とは一線を画すものですが、実際には、様々な西洋医療の現場でも用いられています。
その理由の一つは、アロマが身体、特に脳にもたらす作用がある程度明確になっているからではないでしょうか。
そこで今回は、アロマが脳にどのように届き、どのように身体に影響を与えていくのか?その仕組みを解説します。
この仕組みを知ることで、リラックスだけではないアロマの新しい使い方が見つるかもしれません。
アロマが脳に効く理由・仕組みとは?
アロマの香りは目には見えないものですが、実際には微粒子です。
アロマの微粒子は、嗅覚を通して全身に運ばれ、身体に様々な効能をもたらします。
●アロマが嗅覚を通して匂い情報と結びつけられるまで
・アロマの微粒子は、まず鼻の奥の鼻腔にある「嗅上皮」まで運ばれます。
・嗅上皮は粘膜になっており、その中でひらひらと漂っている「嗅繊毛」がアロマ微粒子をキャッチします。
・嗅繊毛には、その人がこれまで経験した400以上の匂い情報が蓄積されており、今回キャッチしたアロマ微粒子に合う「嗅覚受容体」と結びつきます。
●アロマ微粒子が電気信号になって脳に届くまで
・嗅覚受容体と結びついたアロマ微粒子は「嗅覚細胞」で「電気信号」に変換されて、脳の「嗅球」に運ばれます
そして嗅球で匂いの情報が処理された後「神経シナプス」を通って「嗅皮質」へ運ばれます。
・電気信号となったアロマは、嗅皮質で匂いのイメージが作られた後、本能を司る「大脳辺縁系」の各部位へと伝わっていきます。
アロマが扁桃体に届いた時に起こっていること
電気信号となったアロマが、大脳辺縁系にある嗅皮質から「扁桃体」に届いた時に初めて、好きか嫌いか、心地よいか不快かといった、そのアロマに対する感情が生まれます。
●扁桃体の役割
扁桃体は、本能を司る大脳辺縁系の一部でだと考えられており、人の感情に大きく関わっています。
特に「恐怖」「不安」「緊張」「怒り」などといったマイナスな感情への関連性が深く、何か事が起きた時には、身を守るための身体反応、例えば、攻撃・逃走、ストレスホルモンの分泌・動悸・発汗・震えなどを促します。
アロマを上手に取り入れることは、そういったネガティブな感情を鎮静させることにも繋がります。
アロマが前頭葉に届いた時に起こっていること
電気信号となったアロマが、嗅皮質から扁桃体を通って「前頭葉」まで届くと、味覚・視覚・触覚・聴覚と結びつき、その香りの名前や種類などを判断します。
●前頭葉の役割
前頭葉は、思考や理性などを司る大脳新皮質系の一部だと考えられています。
前頭葉は、行動や感情をコントロールしたり、コミュニケーションを取ったりする際に使われる部分で、人間らしさを司っています。また、クリエイティビティにも影響します。
アロマの香りで前頭葉が刺激されると、仕事の集中力や意欲、能力や効率などが高まります。
アロマが視床下部に届いた時に起こっていること
電気信号となったアロマが、嗅皮質から扁桃体を通って「視床下部」に届くと、自律神経系、内分泌系、免疫系といった身体の機能と結びつきます。
●視床下部の役割
視床下部は、本能を司る大脳辺縁系の一部だと考えられています。
体温、口渇感、空腹感、血糖値、成長、睡眠、起床リズム、性的喚起、情緒などといった身体機能を調整します。
また、セロトニン・オキシトシン・ドーパミン・メラトニンといったホルモンの分泌にも関わります。
アロマの香りで視床下部が刺激されると、通常は自分でコントロールできない、ホメオスタシスに働きかけることができたり、幸せ・愛情ホルモンの分泌を促すことができたりします
アロマが海馬に届いた時に起こっていること
電気信号となったアロマが、嗅皮質から扁桃体を通って「海馬」まで届くと記憶情報と結びつきます。
●海馬の役割
海馬は、大脳辺縁系の一部です。
海馬には、学習したことや知識として覚えたこと、これまで経験したこと、思い出、スポーツや料理といった運動記憶など、すべての記憶情報が蓄積されています。
アルツハイマー病やうつ病の人は、この海馬が萎縮していることが多いと言われています。
自分が心地よいと感じるアロマを取り入れることで、海馬に働きかけられ、マインドを安定させることに繋がります。
動物的な勘を目覚めさせるアロマの不思議
アロマは人に、思考や理性とは逆の、動物的な本能のようなものを目覚めさせる不思議な作用があります。
●匂いの電気信号は大脳辺縁系まで届く
嗅覚細胞で電気信号に変えられた匂いの情報は、脳の大脳辺縁系まで届きます。大脳辺縁系は本能脳や情動脳とも呼ばれており、動物的な感覚を司ります。
5感の中で、大脳辺縁系まで電気信号が送られるのは嗅覚のみだと言われており、言い換えると“匂い”は、理性や思考ではコントロールできない潜在的な意識を引き出しやすいということです。
またアロマが様々な作用を身体・心へいち早く届けられるのは、嗅覚器官である鼻と脳の距離が物理的に近いからです。
嗅覚は他の感覚と比較して、脳まで仲介する神経が少なくダイレクトに本能脳(大脳辺縁系)へ届きます。
●アロマの好みが人によって違う理由
アロマの好みは人によって分かれます。甘い香りが好きな人もいれば、スパイシーな香りが好きな人もいます。
またある人にとって心地よい香りのアロマが、別の人にとっては苦手と感じることもあります。
その違いは、嗅覚受容体遺伝子に個人差があるためだと言われています。
嗅覚受容体遺伝子は、いわば匂いの記憶工場のようなものです。これまで経験した匂いや良い思い出・苦い思い出の時の匂い情報をすべて蓄積していて、同じ匂いを嗅ぐと嗅覚受容体で反応し、その時の経験と共に思い出すことができます。
●アロマの好みが変わることもある
たとえ、苦手だなと思っていたアロマでも、その後の経験によって記憶情報が上書きされることがあります。
このアロマは嫌いだと決めつけず、時期やタイミングを変えて試してみると新しい発見があるかもしれません。
まとめ
今回は、アロマが脳にどのように届き、その結果どのような効能をもたらすのかについて解説しました。
●アロマは微粒子となって、鼻腔に入りその後嗅覚細胞で電気信号に変えられた後、嗅皮質を通って脳の各部位へ運ばれます。
●電気信号に変えられたアロマが届く先の一つは、扁桃体です。
扁桃体は、感情を司る部分で、そこにアロマが届くことでネガティブな感情を鎮静することができます。
●電気信号に変えられたアロマは、扁桃体を通って前頭葉に届きます。前頭葉は人間らしさを司っており、そこにアロマが届くことでクリエイティビティやコミュニケーション、効率といった能力が高まります。
●電気信号に変えられたアロマは、扁桃体を通って視床下部にも届きます。
視床下部は免疫系や内分泌系を司っており、そこにアロマが届くことでホメオスタシスを整えることができます。
●電気信号に変えられたアロマは、扁桃体を通って海馬にも届きます。
海馬は記憶を司っており、そこにアロマが届くことで心を整えることができます。
●アロマにたくさんの効能があるのは、鼻と脳までが近いためです。
●アロマの好みは、嗅覚受容体遺伝子に個人差があるためですが、一方で好みはその後の景観などによって変わることもあります。